看護師の大きい病院から小さい病院への転職には妥協が必要?!

病院とは病床数20床以上の医療機関を指しますが、その中で、病床数20床〜99床のものを小規模病院、100床〜299床のものを中規模病院、300床以上のものを大規模病院、というように分類することができます。

多くの新卒看護師が300床以上の大規模病院で仕事を始めますが、その後の進路は人それぞれ。

自分の目指す看護を模索しながら、そのまま大規模病院での勤務を続ける人もいれば、中規模、または小規模の病院へと転職する人、または病院以外の分野へと進んでいく人もいます。

 

大規模病院は、看護師の教育制度が整っており、給料も良く福利厚生も充実している、といったイメージがありますよね。

そのためか、大きい病院から小さい病院への転職には何かしらの形で妥協が必要である、と考えている看護師が多いように感じます。

 

その固定観念。

今すぐ捨ててしまいましょう。

大きい病院から小さい病院への転職が、必ずしもキャリアダウンや給料ダウンに繋がるわけではありません!

 

大きい病院から小さい病院への転職を考えている方。

妥協のない転職先選びで、これから先の看護師ライフをより素敵なものにしていきましょう。

*ここで言う「小さい病院」は、300床以下の中小規模病院を指しています。

大きい病院から小さい病院へ転職するメリット!

まずは、大きい病院から小さい病院へ転職すると、どのようなメリットがあるのかということを確認していきましょう。

 

①幅広く看護知識と技術が活かせる

大きい病院、とくに大学病院などでは、医療従事者の役割分担がきっちりと分けられていますよね。

ルートの確保や採血は医師の仕事であることも多いかと思います。

 

それに比べて小さい病院では、看護師の担う業務の幅は広く総合的になってきます。

採血やルートの確保はほとんどの場合看護師の仕事ですし、病棟自体が広く混合病棟としての役割を担っていることも多いですから、広い看護知識を一つの場所で活かしていくことができます。

 

②患者さんと看護師の距離が近く、より温かみのある看護が提供できる

大きい病院では、患者さん自身が重看護者であるうえに急患の受け入れも加わったり、院内研修会、各種委員会などのベットサイド看護ではない業務も多く、毎日が忙しく過ぎていきますよね。

 

反対に小さい病院では、忙しさの程度は少し落ちます。

研修や委員会の数は大きい病院に比べると少ない傾向にありますし、患者さんの急変時は大きい病院に転送することが多く、その病院で重看護が必要な患者さんを診ることはあまりありません。

 

そのため小さい病院では、看護師一人一人が時間的に余裕をもって1日の業務をこなすことができます。

患者さんとゆっくり向き合う時間が持てますし、患者さんと看護師との距離が縮まりやすいです。

 

スタッフの数が大きい病院よりも少ないこともあって、患者さんもすぐに看護師の名前を覚えてくれる傾向にあります。

そんなアットホームな雰囲気の中で看護ができる環境は、大きい病院ではちょっとないですよね。

 

また、これは特に99床以下の小規模病院について言えることですが、小さい病院は大きい病院に比べて100床あたりの看護師の人数が多い傾向にあります。

手厚い看護体制がまた、患者さんとゆっくり向き合う看護ができる環境作りの一役を担っています。

 

③私生活を大切にできる

大きい病院に勤めている看護師は皆向学心が高く、医療スタッフ皆で足並みを揃えて更なる医療の進歩のために尽くすのだ、といった、ある種の緊張感と共に仕事をしているところがありますよね。

それに対して、小さい病院にはそんな緊張感はありません。

育児中であったり、持病を抱えていたり、大きい病院での勤務が厳しい環境にある看護師も小さい病院には集まっていますから、「仕事命!」といった空気は全く流れていません。

 

自然と私生活を大切にしてもいいのだという雰囲気ができていますから、大きい病院に比べると休暇も取りやすく、仕事を頑張りながらプライベートも充実させることが可能です。

 

④人間関係のトラブルが少ない

小さい病院は大きい病院に比べると職員の人数が少ないですから、人間関係の構造自体がよりシンプルです。

それに加えて、キャリアアップの為に身をすり減らしている人は珍しく、のんびりと仕事を楽しむ雰囲気ができていますから、人と競い合う空気が発生することもなく、人間関係のトラブルが生じにくい環境である、と言って良いでしょう。

 

大きい病院から小さい病院へ転職するデメリット!

大きい病院から小さい病院へ転職することのメリットを見ていくと、「小さい病院よさそう!転職だ!」と浮かれた気持ちにもなりそうですが、一旦ブレーキが必要です。

 

小さい病院ゆえの不具合だって、やっぱりあるんですよね。

大きい病院から小さい病院へ転職することで生じるかもしれないデメリットも、きちんと確認しておきましょう。

 

①看護の専門的知識や技術の向上を目指すのであれば限界がある

最新医療に携わりたい、特定の分野での専門知識をより深く追求していきたい、そういった思いがあるのであれば、小さい病院で出来ることには限界がありますから要注意です。

 

キャリアアップのための資格取得に対する支援制度も整っていないことが多く、まだまだ看護師として新しいことを学んでいきたいという人には向いていません。

また、特に向学心があるわけではなかったけれど、小さい病院に転職してみると、業務が毎日同じルーティンワークに限られていて飽き飽きしてしまう・・と感じてしまう人もいるようです。

 

小さい病院はあまり波風が立たず平和、大きい病院は緊急性を伴う場面も多々あり刺激的。

どちらの環境がより自分に向いているのか、考えてみてくださいね。

 

②幅広い看護が要求される

前述しましたが、小さい病院での看護師の業務は多岐にわたります。

大きい病院ではその専門知識をより深く追求しながら看護を行ってきたと思いますが、小さい病院では幅広く総合的に患者さんを観ていくことになります。

 

これはメリットとなる部分ではありますが、ずっと大きい病院で働いてきた人にとっては戸惑いを感じてしまう要素にもなり得ます。

 

「総合的な看護」と言えば聞こえは良いですが、実際には雑用と感じてしまう種類の業務が多かったり、大きい病院では他分野のスタッフがやっていたであろう清掃業務やベットメイキング、介護要素の強い業務などが含まれてくることが多いです。

 

それらの幅広い業務を楽しめる人もいれば、不満材料になってしまう人もいるでしょう。

このあたりも自分がどう感じるかの見極めが必要ですね。

 

③人間関係が狭いので、もめてしまうと逃げ場がない

小さい病院へ転職するメリットの一つとして、人間関係のトラブルが少ない、ということを前述しましたね。

職員の絶対数が少ないことに起因していますが、これは逆に、人間関係が限定されるため苦しくなってしまう、というデメリットに繋がる可能性もあります。

 

たとえば職場に一人だけ苦手なタイプの人がいたとします。

大きい病院でならそうそう頻繁に関わることがないので、なんとか我慢もできるかもしれません。しかし小さい病院では、職員数が少ないために一人の人と関わる頻度が上がってしまいます。

そのため、たった一人苦手な人がいるだけなのに、状況が深刻になりがちです。

 

それに、院長のワンマン経営が続いている病院にも要注意です。

特に99床以下の小規模病院について言えることですが、院長の方針や考え方に共感することができなかった場合に、周りとの人間関係もギクシャクして居心地が悪くなってしまう、なんてことは往往にしてあるものです。

 

狭く濃い人間関係は、良い方に転べばアットホームで居心地が良いのですが、悪い方に転べばとことん悪い。結果が両極端に分かれがちなので、少し不安を煽る要素になってしまいますね。

 

④給料が安い傾向にある

小さい病院は大きい病院に比べて給料が安い、というイメージを持っている人は多いかと思います。

実際にはどうなのでしょうか?日本看護協会が2017年に実施した病院看護実態調査の中で、病床規模別の看護師の給与平均額が明示されています。

以下に示しているのは、病床数と勤続10年の看護師の税込給与総額平均値です。

 

99床以下:311,998円

100〜199床:316,759円

200〜299床:315,929円

300〜399床:330,078円

400〜499床:335,834円

500〜599床:346,339円

 

 

300床以上の大規模病院は、299床以下の中小規模病院に比べると平均給与が良いですね。

500床以上の大規模病院と99床以上の小規模病院とでは30,000円以上の差がありますし、賞与と合わせると年収の差が一層広がっていくと推測できます。

 

やはり、小さい病院の給料はあまりよくないというイメージは、真実に基づいたものであるということでしょう。

 

大きい病院から小さい病院へ転職するデメリットを回避するには?

大きい病院から小さい病院へ転職するデメリットを知ってしまうと、「やっぱり小さい病院へ転職するのは止めようかな・・」「小さい病院への転職には妥協が必要だな・・」と感じてしまう人も多いかと思います。

 

しかし!デメリットを回避する方法はあります!

以下のポイントを押さえておけば、大きい病院から小さい病院への転職のリスクを最小限に抑えることができますよ!

 

小さい病院でも看護師として成長できることを知る!

デメリットの一つ目として、「看護の専門的知識や技術の向上を目指すのであれば限界がある」二つ目として「幅広い看護が要求される」ということを挙げました。

つまり、大きい病院で実施されている看護と、小さい病院でのそれとは性質が異なってくるということですね。

 

それは逆に、メリットの一つ目に挙げている「幅広く看護知識と技術が活かせる」ということや、メリット二つ目「患者さんと看護師の距離が近く、より温かみのある看護が提供できる」という利点にもなるのだ、と捉えることができます。

 

今までのように専門分野を追求していけないのは残念なことかもしれませんが、小さい病院には小さい病院の良さがあり、看護の多様性、人に寄り添うということ、そういったことを学ぶ機会が存分に与えられます。

発想の転換次第で、小さい病院でも看護師として成長してくことはもちろん可能ですよ!

 

研修制度のある病院を探す!

二つ目のデメリット「幅広い看護が要求される」については、実際のところ、大きい病院での臨床経験のある人でしたらあまり不安になる必要はありません。

それでもやはり、看護師の教育体制がきちんと整っていれば、不安はより一層軽減されますよね。

 

小さい病院では看護師の教育制度はないのではないかと考えてしまう人もいるかと思いますが、そんなことはありません。

 

日本看護協会が2016年に調査した「中小規模病院の看護の質の向上に係る研修等に関する調査」によると、300床以下の中小規模病院において、看護職員の教育を企画・実施・評価する組織(委員会等)がある病院は 80.8%、看護部門に「院内の教育や研修の責任を担う者」を配置している病院は 81.2%となっています。

 

かなりの割合で、中小規模病院であっても看護師の教育制度が整っていることがわかりますよね。

つまり、教育制度の整った小さい病院を探すことは難しいことではありません。過度に心配する必要はありませんよ。

 

転職サイトを利用して、内部の人間関係についての情報を得る!

デメリットの三つ目は「人間関係が狭いので、もめてしまうと逃げ場がない」でしたね。

このデメリットを回避するためには、事前の情報収集が大切です。

内部の偽りない情報を収集するには、転職サイトの利用が最も効率的かと思います。

 

転職サイトのコンサルタントは、さまざまな病院の内部事情に精通しています。

実際には内部の人間関係があまり良くないのに、人材確保のために面接時や見学時には取り繕っているような所は、残念ながら沢山あります。

信頼に値する情報を得るために、転職サイトの活用はとても有効ですよ。

 

転職サイトのコンサルタントから確認するべき第一ポイントは、言うまでもなく看護師の離職率と定着率です。

あまりに頻繁に看護師が入れ替わっている所は、とても信用できませんよね。

離職率の高い病院は、院長のワンマン経営が看護師確保に悪影響を与えている、医療の進歩に病院が追いつけておらず時代錯誤な看護をしている、などの問題を抱えていることが多いです。

 

加えて、看護師の年齢構成についても情報をもらっておくと良いかと思います。

若い人がいない中高年看護師ばかりの職場は、お局看護師の力が強い傾向がありますし、何よりも若い人が育っていないという点から考えると、看護師教育制度に欠点がある可能性もありますし、病院の将来性にも期待が持てませんよね。

 

とにかく様々な求人をチェック!

最後のデメリットは「給料が安い傾向にある」ですが、それはあくまでも「傾向」です。

給料の良い小さい病院だってもちろんある、ということを覚えておきましょう。

色々な求人情報をチェックすれば、自分の満足できる給料をもらえる病院を見つけることは可能ですよ。

 

求人をチェックする際には、基本給だけではなく夜勤手当などの各種手当の確認も忘れずに行ってくださいね。

特に夜勤手当は小さい病院の方が大きい病院よりも良いこともありますので要チェックです。

 

日本看護協会が実施した「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」の中で、病院規模別の夜勤手当の平均額が示されています。

三交代制の準夜勤手当、深夜勤手当、二交代制の夜勤手当の平均額を、それぞれ見てみましょう。

 

<三交代制の準夜勤手当平均額>

99床以下:3,966円

100〜199床:4,073円

200〜299床:3,836円

300〜399床:3,656円

400〜499床:3,425円

500〜599床:3,329円

 

 

<三交代制の深夜勤手当の平均額>

99床以下:4,913円

100〜199床:5,052円

200〜299床:4,557円

300〜399床:4,435円

400〜499床:4,091円

500〜599床:3,929円

 

 

<二交代制の夜勤手当平均額>

99床以下:10,857円

100〜199床:10,720円

200〜299床:9,821円

300〜399床:9,007円

400〜499床:8,614円

500〜599床:7,807円

 

 

二交代制であっても三交代制であっても、最も夜勤手当の良いのは100〜199床の病院ですね。

全体を見ても、300床以下の小さい病院は、それ以上の規模の病院よりも高額な夜勤手当が支払われていますので、小さい病院で夜勤手当の良い求人を見つけることは、それほど難しいことではないと思います。

 

また、調整手当の有無についても確認しておくと良いでしょう。

調整手当とは、給料の総額をその看護師の能力に見合った額に調整するために支払われる手当です。

 

転職の場合は、以前の臨床経験から想定される能力を評価し、調整が必要であれば、その能力給を調整手当として基本給に上乗せする、という形をとる病院が多いです。

 

調整手当の相場は幅広く、平均は5,000円くらいですが、高い場合は50,000円ということもあるようです。

ただし、調整手当というものは一時的支給であることも多く、金額が変動することだってあります。

 

調整手当に重点をおいて給料の良し悪しを判断することはオススメできませんが、一つのチェック項目として確認しておくと良いでしょう。

それに、調整手当を支給しているということは、看護師を少しでも良い形で待遇しようと考えている病院だと評価することができますので、一つの判断材料にはなりますよね。

 

とにかく様々な求人情報をチェックして、こういった基本給や各種手当についての情報収集をしていく必要があるわけですが、仕事をしながら頻繁に求人をチェックするのは、かなりの負担ですよね。

 

そんな時にも、転職サイトの活用はやはり有効です。

転職サイトを通せば非公開の求人だって紹介してもらえます。

それに、条件の良い求人は人気が高く、求人が出た途端に応募者が集まってしまいますから素早い情報収集が必要になってきます。

そんな時も、転職サイトのコンサルタントが迅速な対応をしてくれますよ。

 

まとめ

大きい病院に勤める看護師は「エリート看護師」といったイメージがあり、小さい病院に務める看護師よりも社会的地位が高いような妄想に取り憑かれている人もいるかもしれませんが、小さい病院の看護師は、そこでしかできない総合的な看護をしながら日々仕事に勤しんでいます。

 

大きい病院には大きい病院の良さがあって、小さい病院には小さい病院の良さがあります。

どちらが高度でどちらが低度、などというふうに分けるのはナンセンスですよね。ただ両者には違いがある、というだけのことです。

その違いに触れるだけでも、看護師としての幅が広がり、成長してくことができるかと思います。

それに、小さい病院への転職にはデメリットが伴いますが、それらを回避することはできると、もう分かっていただけましたよね!

小さい病院だからと妥協はせずに、満足のいく形で転職を成功させて下さいね。

執筆者情報

天職エージェント編集部
天職エージェント編集部
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